タイルのあれこれ

焼き物の知恵が生んだ建築部材の傑作

タイルの発祥

世界最古:エジプト・ファイアンス・タイル

タイルの歴史は、遙か5000年前に遡る。紀元前3500年頃には、エジプトで今日の施釉タイルに近いものが作られ、ピラミッドの地下廊下に使われていたという。
 
紀元前1000年頃になると、メソポタミアで装飾材としてタイルが生まれ、6世紀頃にはイスラム教の勃興とともに、モスクや宮殿の建築に色も鮮やかな彩秞タイルやモザイクタイルが盛んに使われるようになる。
 
中世に入ると、スペインに渡ったタイルは、壁、床、天井の建築部材として用いられ、産業革命によって大量生産されるようになったタイルは、瞬く間にヨーロッパ全土に広まった。

日本のタイル

日本においては、古くは「磚:せん」と呼ばれる陶板が仏教と共に伝わって、屋根瓦、腰瓦、敷瓦として寺院建築に使われたが、広く普及することはなかった。
ようやく明治維新、文明開化の世を迎えて、西洋館の建築に輸入タイルが使われるようになり、人々はタイルの魅力を知るようになる。
20世紀に入ると、ついに国産タイルの製造に成功、大正11年には、それまで敷瓦、張付化粧煉瓦など様々に呼ばれていたタイルが、「タイル」と名称を統一する。
 
そして、関東大震災。煉瓦建築物の多くは崩壊して、これ以降鉄筋コンクリートの時代となり、タイルは一躍脚光を浴びることになる。
一般住宅にもタイルが取り入れられはじめ、内装タイルは、種類も多様に急増する。
そこへ戦争。タイルは「非国策品」のレッテルを貼られ、生産は激減、「冬の時代」を迎える。
 
戦後の混乱の中からタイルはいち早く復興した。技術革新でその品質は飛躍的に向上し、内装に外装に、いつまでも丈夫で美しい理想の建築部材として、今日の興隆に繋がっている。


快適な住空間を創る、比類なき強さと美しさ

タイルの魅力

タイルとは、粘土や陶石、長石などを粉砕し、これを成型して高温で焼き締め、さらに釉薬を掛けて焼き上げたもの。つまり、焼き物、陶磁器製品。熱や水に強く、変質せず、いつもまでも変わらぬ美しさを保つ。
また、焼き物ならではの豊富なデザイン、色彩も自在、それが理想の建築材料として、永く愛用されている由縁といえよう。
 
タイルという名称が定着したのはそう古いことではない。
梅村タイル店創業の7年ほど前、大正11年・東京上野で「平和記念東京博覧会」が開かれ、この時、全国からタイル業者が集まり、タイルという名称が統一されたという。

タイルの分類

タイルは素地により、「陶器質タイル」と「磁器質タイル」に分類される。
陶器質タイルは1000℃以上の温度で焼成され、寸法精度が高く、主に内装タイルに用いられる。
一方、磁器質タイルは1250℃以上のさらに高温で焼成され、耐候性、耐久性に優れているので、外装タイル、床タイルに用いられる。
 


タイル張り工法

工法の進歩

タイル張りの工法も様々に進歩してきた。
伝統的な「だんご張り」ともいわれる「積み上げ張り」「モザイク張り」「圧着張り」。そしてその改良工法。省力化を目指して開発された「先付け工法」。さらに、効率化、施工の簡素化を実現した「乾式工法」の開発。
従来は難しいとされていた木造住宅の外壁タイル張りも乾式工法の進歩で可能になった。
 
いつまでも強く、美しくーーーーータイルが創る快適な住環境の場は、ますます多様に大きく広がっている。